Realtor JapanとReal Estate Agent in Japan



未利用国有地の有効活用

2010年

財務省が、国有財産の有効活用に動き出した。新成長戦略における未利用国有地などの国有財産の活用に関して2010年5月と9月、民間の声を吸い上げるための公開ヒアリングが開かれ、われわれみずほ信託銀行の役職員も民間有識者として参加する機会を得た。

税収不足はまさに喫緊の課題であり、税外収入を真剣に考えなければならない状況が財務省の背中を押したともいえるが、これまで未利用国有地は処分一辺倒であったのに対し、今後は借地権を設定して土地を貸したり、建物を建てて賃貸有効活用を行ったりと、選択肢の幅が広がる可能性が出てきた。

例えば、都心部の収益性の高い土地では、単純に処分するよりも賃貸した方がトータルで有利になるケースもあり、安定的な税外収入に資する場合がある。また、少子高齢化対策として保育所や介護施設など収益性の厳しい施設を誘致するには、売却より賃貸の方が誘致しやすいというメリットも期待できる。

建物の賃貸か土地の賃貸か

遊休地の活用という点では、国より地方公共団体の方が先輩である。地方公共団体の土地活用では、しばしば賃貸型の土地信託が利用されてきた。賃貸型の土地信託とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、信託銀行が土地所有者の目的に沿って、計画の策定から資金調達、工事の発注、運営、管理などを担い、信託期間終了時に土地と建物をそのまま土地所有者に返還する仕組みである。実例の中には、少子高齢化の進展の中で併合などが続いている区立小学校跡地を有効利用した土地信託ビルなどがある。

一方、国有地における賃貸型の実例はまだない。実績配当の土地信託は、オフィス市況などの変動リスクを伴うため、立地条件や事業化のタイミングを吟味する必要があるが、都心に位置する未利用国有地では高い収益性が期待できるので、有効活用手法として土地信託スキームの検討をご提案したい。

都心の好立地であれば、建物を建てて賃貸した方が収益性は高まるが、建築資金の追加投資が必要となる。資金を借り入れで賄えば、収支が悪化した場合には資金ショートや債務不履行のリスクもあり、民間の事業ノウハウの活用が必須といえる。

一方、土地の賃貸、いわゆる借地権の設定であれば、このような追加投資は起きないし、損失リスクも軽減できる。ただし、借地権と一口に言っても、普通借地か定期借地か、地上権(物権)か賃借権(債権)か、また資金の収受についても、一時金としての権利金を手厚くするか、地代によるランニングの収入を重視するかなど、バリエーションは豊富であり、いろいろと検討すべき事項は多い。また、土地の賃貸でも建物の賃貸でも、目的に合わせてテナント需要に関する徹底したマーケットリサーチが重要であるし、賃貸借契約の内容についても的確なアドバイスが必要となる。

最適な用途は何か

不動産の有効活用には、まずその物件の最有効用途が何かを見極める必要がある。立地条件だけでなく、福祉施設などのそのエリアの整備状況を把握し、収益を目的とするのか、福祉施設などの整備を目的とするのか、最適な活用方針を打ち出す必要がある。

企業においては、CRE(企業不動産)戦略と称して、経営戦略的視点に立って保有不動産の管理、活用を行い、企業価値の向上に結びつける動きがある。これに対し、公的不動産の適切なマネジメントのことをPRE(公的不動産)戦略といい、徐々にではあるが注目を集めるようになってきている。

信託銀行などの民間専門業者をアドバイザーに据え、まずは保有不動産を物件ごとに時価算定し、立地特性などを把握することから始めることが肝要である。

土地CRE戦略

2008年

企業が不動産を持つ意味

会計制度をはじめとする諸制度の変更やIRの問題など、外部環境の変化(外圧的要因)が、昨今CRE戦略が注目を集める要因の1つとなっていることは前回に触れたとおりですが、企業はこれらの要因に対して、必ずしも“やむなし”という姿勢で対応を始めているわけではありません。むしろこれらの要因をきっかけに各メディアが「CRE戦略」の必要性を取り上げ始めたことで、「CRE戦略」への認識が高まり、積極的に取り組もうとする企業が増え出している、というのが正しい認識ではないかと思われます。

わが国では不動産は企業のバランスシートの40%近くを占め、人件費に次ぐコスト要因ともいわれています。経営指標や損益に大きな影響を与えているにもかかわらず、これまでそれが強く意識されることはありませんでした。本業分野では乾いた雑巾を絞るようなコスト削減努力を続けながら、一方では遊休不動産などの本業以外の不動産が棚晒しになっています。極めて不思議な現象なのですが、日本特有の不動産に対する意識もあって、実態としては“よくある光景”だったと思います。

このような企業意識に大きな変化をもたらした要因の1つに、不動産投資市場の整備・拡大が挙げられます。いわゆる旧SPC法ができたのが今からちょうど10年前。2001年にはJ-REIT市場が創設されましたが、不動産の証券化という言葉が広く一般的に使われるようになったのはここ数年のこと。住専破綻や金融ビッグバン直後の当時からは考えられないような劇的な変化が不動産市場に起きています。

この不動産市場の変化はさまざまな影響や効果をもたらしましたが、企業にとっては、これまで社内でもややクローズに扱われがちであった不動産について、客観的かつ公正なプライシングが可能となりました。また、証券化やプロパティマネジメントなど多様なマネジメント手法が登場したことによって、積極的かつオープンに不動産を動かしていこうというインセンティブも高まりました。

この結果、不動産の持つ「ポテンシャル」にも次第に注目が集まるようになり、今や不動産はヒト・モノ・カネ・ITに次ぐ“第5の経営資源”として脚光を浴びるようになりました。時期を同じくして、代表的なCREホルダーである製造業を中心にバブル崩壊後の負のリストラが一巡し、戦略的な拡大へ向けた事業の選択と集中を進める中で、不動産についても前向き・戦略的に再構築しようという気運が高まったことも大きな要因となっています。

前回ご説明した外部要因とこれら企業内部の要因が重なり合って、今、CRE戦略が大きな注目を集めているのです。

企業の保有不動産

2005年4月

ASPサービス

企業の保有不動産に対する考え方が大きく変化している。地価上昇時代に「資産」としての価値を見出してきた保有不動産は、地価下落や景気低迷による事業活動の悪化を背景に、資産価値としての意味合いが薄れてきた。組織スリム化や事業所の統廃合に代表されるように、無駄な不動産を極力排除する意識が高まり、さらには減損会計対応に、これまで軽視してきた不動産の保有コストに目が向けられるようになってきた。事業運営上の最適な不動産戦略(CRE)を加速する企業経営の意識変化に、建設業界にとっての新たなニーズも見え始めた。

清水建設のベンチャー企業として2000年から活動を始めたプロパティデータバンク(東京都港区)は、不動産資産の効率化に向けたCRE戦略の拡大を背景に、不動産運用や施設管理業務を支援するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスを提供している。

施設管理など間接部門の縮小が進んだことから、建物運用効率やLCC(ライフサイクルコスト)など保有不動産の最適化を進めるためのツールに、ASPを採用する動きが拡大してきたという。さらに不動産投資ファンドの拡大によって、機関投資家がデータ管理にASPを活用するケースも増えている。起業して5年目に入り、プロパティデータバンクのサービス提供数は100社を超える状況だ。

NTTファシリティーズも2005年1月から、保有不動産の最適化を支援する同様のASPサービスの提供をスタートさせた。NTTグループが所有する土地(約4000万m2)や建物(約4万棟)を管理する支援ツールとしての利用だけでなく、一気に動き出したCRE戦略への対応も見据えている。異業種同士がコンソーシアムを組み、ASPサービスを提供する動きも出てきた。日建設計、日本電気エンジニアリング、松下電工の3社も2005年4月から、不動産資産の最適化を支援する同様の事業をスタートさせた。各社独自で取り組んできた建物運用管理のシステムを統合する試みだ。

保有施設や不動産の最適な利用については、企業経営だけでなく、公共機関も今後の重点施策に位置付けている。公共事業予算の減少により、老朽化施設をすぐに建替えることが難しく、保有建物の最適な維持管理が最重要課題になるからだ。

一方で建設業界がASPによる資産管理事業を相次ぎ展開する背景には、建物維持管理ニーズの掘り起こしだけでなく、建物・不動産情報の管理データが、本業の営業活動に役立つ先行的なビジネス材料としての意味合いもあるようだ。

保有資産のコンバージョン

保険会社にとって信頼性の担保の1つが建物といわれている。また、生命保険の資金の運用の中に不動産も位置付けられている。遊休資産を売却して一時的な収益を上げるのではなく、保有資産(建物)をオフィスビルから賃貸住宅にコンバージョン(用途変更)して資産価値を高めた第一生命のケースをみる。

保険会社は全国各地に大量の不動産を所有している。「当初は、自社使用以外の余剰スペースを貸し出していたが、その後賃貸用の投資用ビルを本格的に手がけていった。しかし、バブル後は、多くのビルを売却せざるを得なかった」と第一生命の梅垣春記不動産部部長は語る。その後も組織再編などにより、遊休化したビルが生まれていった。

「今後も売却すればいいのかという疑問が湧き、資産の有効活用について知恵を出し、売却せずにリターンがでるものを手がけていこう」(梅垣部長)と検討を重ねた結果の1つが、東京都目黒区の旧自由が丘支社の建物を賃貸住宅にコンバージョンすることだった。

旧支社建物は、駅に近く、まちのポテンシャルが高い場所にある。「これまでの経験と勘、われわれの持つネットワークから商品化できると判断し、関係者でチームをつくりスピード重視で取り組んだ」(梅垣部長)という。

第一生命では、施設整備に当たり、信頼できる企業を特命で指名し、一体感をもって仕事をしてもらうことがベストだと考えている。「商品性と社会性のバランスがとれた社会的評価が高いビルになる」(梅垣部長)というもっとも良い結果が得られるからだ。

発注者の立場としては、「与条件プログラムづくりをもっとも大切にしている」(梅垣部長)。プログラムをきちんとつくり込むことで、設計・施工を手がける企業に最善を尽くしてもらえれば、建物を通じてCSR(企業の社会的責任)も醸成され、保険契約者に対しても還元することができると考えている。

アセットマネジメント

土木分野では従来の対症療法型から予防保全型の管理手法への転換をめざし、道路構造物を中心にアセットマネジメントの取り組みが加速している。わが国では全橋梁の約40%、全トンネルの約25%が高度経済成長期に建設された。10数年後にはこれらの施設が一度に更新時期を迎えることから、その平準化と費用の最小化を目的に各発注機関で導入が進んでいる。

構造物を資産としてとらえ、その状態を的確に把握・評価し、適切な時期に適切な対策を講じるには、いつ、どこで、どのような対策を行うのかを決定するシステムが必要となる。

国土交通省は2004年度に橋梁を対象にシステムの基本的な枠組みをいち早く構築した。今後はトンネルなどにも対象を拡大し、運用時に欠かせない構造物の点検や劣化予測などの技術開発を進める。

東京都でも道路構造物で同様の取り組みを始めている。2004年度にはシステム構築の参考にするため、民間から工法や点検手法などの技術を募集した。2005年度は都庁全体の重点事業に位置付け、その対象を河川、港湾、海岸施設に拡大する方針を打ち出している。地方でも静岡県や愛知県などで取り組みが進められており、徐々にではあるが、アセットマネジメントによる新たな管理手法が全国に浸透し始めている。

限られた予算の中で、老朽化したすべての構造物を更新することは難しい。更新時期の平準化と費用の最小化を達成するには、ライフサイクルコストを低減する技術が不可欠となる。これにこたえる技術として、発注者はさらなる長寿命化工法とその前段となる高精度で効率的な調査・診断技術を求めている。

経済産業省は、住宅分野の省エネルギー対策を進めている。その1つが民間分譲住宅のESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)・リース事業だ。

ESCO・リース事業は、居住者と電力会社が個別に結んでいる低圧受電契約を一括で高圧受電契約に変更し電気料金を削減する。さらに自家用キュービクル(変電設備)導入により生まれる削減分を、省エネ設備・建材の投資に充てるしくみ。居住者、管理組合、ESCO事業者、リース事業者がそれぞれメリットを享受した上で、省エネ建材・設備を普及させる。経済産業省は現在、モデル事業の候補地を選定中で、2005年度内に事業を立ち上げる考えだ。

ESCO・リース事業の広報・普及、相談窓口、省エネメニューの作成、あっせん、マッチングなどの実務面を担う日本建材・住宅設備産業協会(建産協)は、専門委員会をつくる準備を進めている。広くメーカーなどの参加を募り、事業を進める。当面はESCO・リース事業のファーストモデルの成果をPRし、メリットを周知する考えだ。日本建材・住宅設備産業協会は、設備・機器の需要が増えることから「メーカーの興味は高いのではないか」とみている。

省エネメニューの中の主要な設備機器・建材を改修することで、1戸当たり21.4%のエネルギー削減効果があるという試算が出ている。また、水も含めた住宅の運用で排出されるCO2は、1戸当たり661-799kgが削減される見込みだ。

ユーザーにとっては、ESCO事業で電気代が安くなるとともに、リース手法により、設備機器・建材を導入する際の初期投資が少なくなるなどのメリットがある。

一方、居住者の生活スタイルによって省エネ効果が異なることや、水道、ガスの削減量が把握できないことから、試算評価の信頼性が課題となる。

外資系企業の誘致

東京都心部のオフィスビル開発に強みを持つデベロッパーにとって、重要な顧客の1つに外資系企業がある。都心に完成した大規模オフィスビルに、日本での本拠を構える外資系企業も少なくない。森記念財団の調査によると、外資系企業の本社(日本国内本拠)は東京23区内に1639あるが、このうち半数以上の55%が港区と千代田区で占められている。森記念財団の調査から、外資系企業のニーズを探ってみる。

森記念財団によると、外資系企業が入居するビルが最も多いのは、港区で317棟(508社)、次いで千代田区の192棟(392社)、中央区127棟(141社)の順となっている。

港区内で外資系が10社以上入居するビルは、すべて虎ノ門、赤坂、六本木のエリアにある。官公庁街へのアクセスが良く、外国大使館やホテル、商業施設なども立地している。いずれも延べ3万m2以上の大規模ビルで、築年数が比較的新しいのも大きな特徴だ。

外資が港区に集中する背景は、外資側のニーズというよりも、デベロッパーの営業戦略という側面もありそうだ。森記念財団は「港区内の立地の良い場所に大規模オフィスビルを建設し、外資系企業を積極的に誘致してきたデベロッパーも見られる」と分析している。

外資系が必ずしも築年の新しい最新スペックのビルばかりに入居しているわけではない。

たとえば千代田区内では、1960年代、1970年代に建設されたビルにも入居している。その一方で、丸の内や大手町など、高賃料の最新ビルに入居する外資も少なくない。

森記念財団は「千代田区のオフィス一等地という場所へのこだわり、交通利便性などを総合的に加味した結果と考えられる」とみている。

バブル期に兜町で話題になった仕手筋

上から仕手名、主な仕手銘柄と内容・活動年次、その後

誠備グループ(主宰者加藤あきら氏)

主な仕手銘柄

宮地鉄工所、石井鉄工所、安藤建設、日立精機

内容

約4000人の会員から資金を集め、大規模な仕手戦を展開。

活動年次

1978年~1981年

その後

1981年2月、加藤氏脱税容疑で逮捕。1990年5月、加藤被告本人の脱税は無罪、共謀部分のみ有罪

投資ジャーナル(中江滋樹会長)

主な仕手銘柄

関東電化工業

内容

約1万人の会員から総額584億円の金を集め中江会長個人の仕手戦に流用。

活動年次

1978年~1985年

その後

1984年9月、倒産。負債額約180億円。1985年6月、中江会長、詐欺罪で逮捕。1989年4月、懲役6年の実刑判決が確定

ビデオ・セラー(オーナー高橋博氏)

主な仕手銘柄

藤田観光、森永製菓、不二家

内容

年間1000億円以上の資金を使った。

活動年次

1983年~1985年

その後

1985年10月、高橋氏が心不全で急死。仕手から撤退した

三洋興産(岡崎弘社長)

主な仕手銘柄

日本レース、日本航空

内容

「石油ころがし」で資金を作り、大規模な仕手を展開。

活動年次

1983年~1986年

その後

1986年4月、倒産。連鎖倒産は50社を超え、負債総額は約3000億円に上った

コスモポリタン(池田保次会長)

主な仕手銘柄

タクマ、日本ドリーム観光、雅叙園観光

内容

1987年10月の株式大暴落、タクマ株の急落で資金繰りに行き詰まった。

活動年次

1986年~1988年

その後

1988年8月、池田会長が突然失踪、崩壊した。現在も行方不明のまま。負債額はグループ全体で3117億円

日本土地(孫圭鎬=日本名木本一馬社長)

主な仕手銘柄

コニカ、豊田自動織機製作所

内容

豊田自動織機製作所株は、高値で買い取らせたものの、コニカ株は急落で崩壊。

活動年次

1986年~1988年

その後

1988年10月、孫社長が銃刀法違反で逮捕。総額1582億円の負債を抱えて破産申請したが、1989年7月、大阪地裁が破産廃止決定

あけぼの企画(オーナー田井光明氏)

主な仕手銘柄

東光電気、日工、宇徳運輸、オリジン電気

内容

相続税を払えず、株を始め、膨れ上がった金利で行き詰まった。

活動年次

1986年~1990年

その後

1990年4月、金利が返せず、ホテルを転々とする逃亡生活。負債額は約900億円。田井氏は、元々は医師だった